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『Measure What Matters』を読んだのにOKRがうまく行っていないときに読む記事

みなさんは、OKR(Objectives and Key Results)を実践していますか?OKRなしでは考えられないほどうまく運用できていますか?
OKRの原典とも呼べる「Measure What Matters」を読んだときの興奮はいまでも忘れられません。

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本書で紹介されている**「恐ろしく野心的な目標に従業員全員が全力で取り組む」**姿に憧れ何度もOKRの実践に挑戦してきました。
しかし、なんどOKRの型を真似て実践してもそのような奇跡は一向に訪れませんでした。
失意の中、改めて本書を何度も丁寧に読み直してみたところ、いくつかの根本的な勘違いをしていることに気が付きました。
本書はOKRの魅力を最大限に伝える構成になっているため、導入や運用に必要な情報は各章に点在してしまい、実践ガイドの参考書として活用しようと思ってもなかなか要領を得ません。

そこで、本記事では「Measure What Matters」を再構成して、OKRの真の力を発揮するために導入時や運用時に重要なポイントを解説したいと思います。

勘違い① : OKRの目的は「共通の全社目標に全社員をアラインすること」である

同じ勘違いをしている人って結構多いんじゃないでしょうか?
全社の「目標(O)」と「主要な結果(KR)」を頂点として、トップダウンに各レイヤー(全社-チーム-個人)分割していきロジックツリーのようなピラミッド構造を取ることで「共通の全社目標に全社員をアラインすること」がOKRの要諦であると私は考えていました。

「Measure What Matters」にも以下のような記述があります。

用意したスライドの1枚目に、私はOKRの定義を書いた。「会社内のあらゆる組織が、同じ重要な課題に全力で取り組むようにするための経営管理手法である」

Measure What Matters 19頁

なんか私の解釈が正しいような気がしませんか?
しかし、これが大きなワナでして、私の解釈はMBO(Management By Objectives and self-control)というOKRの前身となった経営手法なのです。
そして何がワナかといいいますと、MBOは1990年にはすでに多くの問題が指摘され下火になっており、その問題を解決したのがOKRなんですね。
つまり、上記解釈でOKR(実態はMBO)がうまくいかないのは当然で、それはすでに30年も前に歴史が失敗を証明しているのです。

じゃあOKRの目的はなに?

OKRの目的は

個人の強みと責任感を発揮させつつ、同時に全員のビジョンと努力の方向性を一致させ、チームワークを 醸成し、個人の目標と全員の幸福を調和させることでとんでもなく野心的な目標を達成すること

Measure What Matters 44頁

と定義されています。
この定義はOKRの前身であるMBOを開発した際に、P.F.ドラッカーが定義したものであり、OKRも同じ目的を引き継いでいます。
なぜ目的は同じなのに新たな手法が必要だったのでしょうか?
MBOには目的に達するためのアプローチに問題がありました。
アプローチと目的へ及ぼした影響の違いをまとめたものが以下の表です。

MBOとOKRのアプローチの違い

MBOはモチベーション2.0(外的な報酬と罰)、OKRはモチベーション3.0(自律性、熟達、目的)に基づいたアプローチを採用していると捉えることができます。

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MBOはモチベーション2.0(外的な報酬と罰)に基づいたアプローチを採用したため、保守的でプロセスの自己目的化の罠に陥り、目的を達成することができませんでした。

OKRはMBOの限界を受けて、従業員全員がモチベーション3.0(自律性、熟達、目的)に基づいた働き方を実践できるように仕組み化と支援することで目的の達成を目指します。
これは、notionやslackのような生産性向上のツールを導入するというよりは、基幹OSをまるごとリプレイスするようなもので、従業員全員に大変な苦痛と労力を伴う作業でもあります。

OKRの目的とアプローチを正確に理解し納得することが、「Measure What Matters」で紹介されているような優れた効果を発揮するための第一歩となります。

勘違い② : OKRで目標管理だけ実践すればよい

「勘違い① : OKRの目的は「共通の全社目標に全社員をアラインすること」である」で見てきたように、OKRでは全社目標達成のために自身が最大の価値を生み出せるように主体的に目標定め達成に向けて全力を発揮することがすべての社員に期待されます。
当然のことながら、四半期に一度、目標の設定と振り返りしている程度では、上記のような期待する思考と行動への変容を期待することはできません。

より頻繁で戦略的なコミュニケーションが求められます。
それがOKRを補完するもう一つの要素、CFRです。

CFRはOKRを成功させるために半構造化された1on1のフレームワークです。
CFRは対話(Conversation)、フィードバック(Feedback)、承認(Recognition)の頭文字を取っており、対話、フィードバック、承認を通じて、目標の達成、OKRを中心とする企業文化の涵養、個人の能力と意欲を最大限に引き出すことが狙いです。

OKRシステムは以下の図のように、OKR、CRF、企業文化の3要素からなる経営手法であり、目標管理フレームワークであるOKRはOKRシステムの一要素に過ぎません。
OKRシステムの本質は、OKR->CRF->企業文化->OKRのループを何度も回す中で発生する従業員の共有学習(問題をともに解決し、有効な方法を考え出そうとする取り組み)の仕組み化であり、適切な共有学習を通じたハイパフォーマンスな企業文化の獲得なのです。

OKRシステムの全体像

CFRって何をするの?

OKRは馴染み深い方も多いと思いますが、CFR初めて聞く方の多いと思いますので、CFRに付いて概要を説明します。
わかりやすさを優先して説明しますので、若干厳密さを犠牲にしますのでご容赦ください。
CFRは対話・フィードバック・承認の3パートから構成される1on1のフレームワークです。
1on1で取り上げるトピックを共通化することで、OKRのトラッキングとOKRを通じたコアバリューを会社の隅々にまで行き渡らせることができます。

では各パートではどのようなコミュニケーションがなされるのでしょうか?

対話(Conversation)パート
対話パートでは主にOKRで定めた目標の進捗状況について意見交換をします。議論のトピックはOKRサイクルのどの段階にいるかによって変化します。

  • 【今四半期の期中】継続的進捗報告 : 個人OKRの進捗状況を簡潔かつデータに基づいて確認し、必要があれば問題を解決する
  • 【今四半期の期末】非公式なパフォーマンス評価 : 今四半期の働きぶりはどうだったか最大限意欲と能力を発揮できていたか振り返る
  • 【来四半期の期初】目標設定 : 個人の目標やキャリアと組織の優先項目を一致させるためにはどうすればよいか議論して来四半期の目標を設定する

目標の進捗状況に関するトピック以外にも以下のトピックについて定期的に議論をします。

  • 双方向のコーチング : フィードバックパートをより実りのあるものにするために、マネージャー・従業員の双方が期待するものを意見交換する
  • キャリア開発 : 従業員が会社における自分の将来像を描けるように成長の機会と方向性を共有する

フィードバック(Feedback)パート
日々の業務をより効率的効果的に行うための改善提案について意見交換をします。フィードバックが大きな恩恵をもたらすためには具体的でなくてはなりません。また、フィードバックはリアルタイムかつ様々な従業員から提供されるようにマネージャーは働きかける必要があります。

承認(Recognition)パート
四半期OKRを中心とした大小さまざまな貢献に対して、メンバーに感謝や称賛を伝えます。これは、うまくいっていることを強化することと、従業員の会社への帰属意識を育むことを目的としています。承認もフィードバックと同様にリアルタイムかつ様々な従業員から提供されることが望ましいです。

つまり、OKRシステムの導入は超ヘビーな経営課題である

OKRシステムの導入は、目標(O)と主要な結果(KR)を用いて四半期に一度振り返るだけでは期待する効果を得るには全く不十分であることがご理解いただけたでしょうか?
OKRシステムから大きな恩恵を得られるためには多くのリソースの投資が必要となります。中でも重要な要素は以下の3つです。

経営陣のコミットメント

これは本書を通じて何度となく繰り返されている重要なメッセージです。

OKRを成功させるにはリーダーが全力で取り組む姿勢を全社員に言葉と行動で示す必要があることを学んだ。(81頁)

体系的な目標設定を定着させるには、まず経営幹部がそのプロセスにコミットする必要がある(113頁)

社員から真のコミットメントを引き出すには、 リーダーが率先垂範しなければならない。(114頁)

私が学んだ重要な教訓は、トップ のサポートがどれほど重要かという ことだ。(246頁)

私の経験では、OKRはトップに立つ人々が徹底的にコミットしなければ効果が高まらない。ある意味では聖職者に似ている。人々を改宗させるのは困難で、報われない仕事だ。改宗が進むまでは (それには1年かかることもある)、嫌われ者になるかもしれない。だがそれだけの価値はある。(285頁)

Measure What Matters

OKRシステムはすべての従業員がモチーべション3.0に基づいて主体的に行動するような行動変容を必要とします。
この行動変容には大変な苦労と負荷が従業員にはかかります。
経営者が形式だけ賛同していたり、自分たちだけは例外としていると従業員にはすぐわかります。
自ら苦労を買って出るような従業員もいなくなるでしょう。
OKRシステムを導入する際は、本気で導入する覚悟があるのか、経営陣で改めて認識を共有する必要があります。

辛抱づよく、決然と実践する姿勢

OKRシステムは型通りに導入すれば直ぐに効果を現すレディメイドなシステムではありません。
幾度もの試行錯誤を経て、会社と従業員一人ひとりが自分のものとしていくオーダーメイドなシステムです。
そのため、何度も何度も失敗を繰り返し、失敗を分析しうまく運用できるように少しづつ改善する作業を辛抱強く続けることが求められます。

グローブがiOPECの講義で語っていたように、OKRの導入後「インテルは何度も躓いた。その基本的目的が何なのか、十分理解していなかったからだ。時間の経過とともに、少しずつうまくできるようになってきた」。システムが軌道に乗るまでには、4~5四半期のサイクルを繰り返す必要があるかもしれない。目標設定のための筋肉を十分身につけるには、さらに多くの時間がかかるだろう。(58頁)

OKRは最初の挑戦で文句なしにうまくいくということはない。2回目、3回目でも完璧にはならない。でも、それでくじけてはダメだ。辛抱しよう。修正しながら、自分たちに合ったものにしていく 必要がある」。コミットメントが成功を呼び込む。OKRを最後までやり遂げれば驚くべき結果が得られることを、私は身をもって学んだ。(118頁)

Measure What Matters

それと同時に、導入したチームでは全員が取り組むように決然とした態度で望むことも重要です。
これにはどのような立場・状況であろうとも例外はありません。

OKRが効果的に機能するには、それを導入したチーム(経営陣が組織全体かにかかわらず)の全員が一斉に取り組まなければならない。例外や離脱は許されない。もちろん腰の重い人、抵抗する人、さまざまな理由で先送りする人はいるだろう。彼らを群れと行動をともにさせる一番良い方法は、1人以上のOKRの番人を任命することだ。

Measure What Matters 172頁

サポートチームの組閣

従業員がOKRシステムの効果的な試行錯誤を繰り返すために、サポート体制への投資が必要になります。
OKRプロセスを徹底させる役割を持つ**「OKRの番人」**中心としたチームを組閣し、以下の取り組みを任せます。

  • プロセスの徹底 : (経営陣も含めた)すべてのメンバーでOKRが適切に運用されているように働きかけます
  • プロセスの改善 : 現場の意見に耳を傾け、自分たちにあったOKRシステムに改善していきます
  • 学習リソースの提供 : 建設的なフィードバックに必要なスキルを身につけるためのテンプレートや動画など、実践的な学習リソースを提供します。

サポートチームが効果を発揮するために、経営陣は「OKRの番人」を中心に、サポートチームに対して、OKRの実践と改善について完全な権限の移譲と必要なサポートを約束すると良いでしょう。
サポートチームは経営陣無含めて、OKRプロセスを遵守させることに責任を持つため、強い権限と経営陣の信任が必要となるためです。

どこから始めたら良いか?

一部のチームで導入してみる

まずは経営陣だけで始められないか検討してみてください。
全社的にOKRシステムを定着させるためには、経営陣のOKRシステムへのコミットメントが不可欠になります。
そのためには、経営陣全員がOKRへの抵抗感を克服し、実用的で価値のあるシステムであることを認識する必要があります。
そこで、経営陣でOKRを実践してみて、プロセスが馴染んできたら全社展開するステップは非常に効果的です。

また、OKRが形式化していることに問題意識を持っている場合は、自分のチームだけでフルスペックのOKRシステムを運用してみることも有効です。
もし効果が上がれば、経営陣に説得力のある改善の提案ができるようになります。

トップレベルOKRに「OKRの実践」を設定する

OKRシステムを導入するときは、全社目標に「OKRの実践」を設定すると良いでしょう。
これは、OKRの導入が経営課題として認識されていることと、導入の進捗を全社員にハッキリと示すことが目的です。
そうすることで、従業員の意識改革を促しOKRシステムの浸透を促進することができます。

OKRの番人を任命する

サポートチームをいきなり組閣するのは大変なので、まずはOKRの番人を任命しましょう。
任命して直ちにすべての従業員にプロセスの徹底を強いることは困難です。
そこで、任命初期はOKRの番人には学習リソースの作成と共有を任せると良いと思います。
OKRシステムの社内の認識を揃え、OKRの専門家であることが周知された段階で、プロセスへの介入を検討してみましょう。

また、任命当初から期待する役割と権限については経営陣から明確に繰り返し、従業員に説明をするようにしましょう。

まとめると

  • OKRの目的は、「個人の強みと責任感を発揮させつつ、同時に全員のビジョンと努力の方向性を一致させ、チームワークを醸成し、個人の目標と全員の幸福を調和させることでとんでもなく野心的な目標を達成すること」です。コミットメントとサポートを徹底的に実施できるほどこの目的に経営陣が共感しているかどうか今一度見直してみましょう。
  • OKRシステムの本質は、OKR->CRF->企業文化->OKRのループを何度も回す中で発生する従業員の共有学習の仕組み化と企業文化の獲得にあります。OKRによる目標管理だけでなく必ず、全社的な1on1の仕組み化もセットで導入しましょう。
  • OKRシステムを成功に導く重要な要素は「経営陣のコミットメント」、「辛抱強く、決然と実践する姿勢」、「サポートチームの組閣」の3つです。この3要素を約束できるか確認しましょう。
  • 最初に始めるときは、「経営陣だけで始める」、「トップレベルOKRにOKRの実践を設定する」、「OKRの番人を任命して教育と情報発信をする」の3つから着手すると、全社にスムーズに展開できます。

皆さんの会社のOKRシステムが少しでも改善すると嬉しいです。


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